建設工事における既存地下工作物を残置(埋め殺し)できるかの取扱い(判断)について

法規制の解説

 建設工事の解体工事や新築工事を請け負った会社において、工事を進める際に、既存の地下工作物を解体せずに残置(埋め殺し)してよいのか判断に迷うことがあります。

 発注者からは、工事費を安くするために、そのまま残置しておいてほしいと言われることも多くあると思います。

 これまでは、自治体に相談にいっても、自治体によって異なる判断がされることがありましたが、最近になって業界団体からガイドラインが示されたり、環境省から法解釈に関する通知がされるなど、地下工作物の取り扱いが明確になってきました。

 本記事では、建設工事における既存地下工作物を残置できるのか、できるとして、どんな場合にできるのかについて説明したいと思います。

本記事は、

  • 地下工作物の撤去を請け負った業者さん
  • タワークレーンの基礎杭や山留め壁などを設置した業者さん
  • 地下工作物を埋め殺してしまって法違反にならないか心配されている方

などにおすすめの記事となります。

これまでの既存地下工作物の残置の取り扱いについて

 既存の地下工作物を残置する行為は、これまで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)に基づいた、厚生省の通達(昭和 57 年環産第 21号「廃棄物の処理および清掃に関する法律の疑義について」)により、以下のとおり、廃棄物処理法の適用を受けるとされ、地方自治体の環境課に相談にいっても、「残置してよい」、「撤去しなければならない」と異なる判断がされることがありました(現在は、この通達は廃止されているようです)。

(地下工作物の埋め殺し)

【問 11】地下工作物が老朽化したのでこれを埋め殺すという計画を有している事業者がいる。この計画のままでは生活環境の保全上の支障が想定されるが、いつの時点から法を適用していけばよいか。

【答】地下工作物を埋め殺そうとする時点から当該工作物は廃棄物となり法の適用を受ける。どのようなものが廃棄物処理法の適用のある地下工作物にあたるのか

具体例をあげると、

  • 掘削工事に伴い設置する土留め壁
  • タワークレーンの基礎を設置するための杭
  • 既存建物の地下室

などで、埋め殺してしまう場面から廃棄物処理法の適用を受けるものとなるようです。

最近の動き

 このような状況であったことから、日本の大手ゼネコンが会員となっている建設業者の業界団体である日本建設業連合会が、以下のURLの「既存地下工作物の取扱いに関するガイドライン」を示し、自治体における取扱いの現況や既存地下工作物の取扱いに関する提案をしました。

既存地下工作物の取扱いに関するガイドライン| 建築 | 日本建設業連合会
一般社団法人日本建設業連合会(日建連)は建設業界を代表する団体として、建設業に関係するさまざまな課題に取り組み、建設業の健全な発展に力を注いでいます

(出典)日本建設業連合会ホームページ

 このガイドラインをきっかけに、環境省において「第 12 回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について(通知)」が発出され、地下工作物の取扱いが明確になりました。

では、どのような場面で残置してよいかというと、次の①~④のすべての要件を満たすとともに、日建連のガイドラインの「3.2.3 存置する場合の留意事項」基づく対応が行われる場合は、関連事業者及び土地所有者の意思に基づいて既存地下工作物を存置可能(廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用外)と判断します。

https://www.env.go.jp/recycle/notice_2109301_2109302.pdf

(出典)環境省ホームページ

  1. 存置することで生活環境保全上の支障が生ずるおそれがない。
  2. 対象物は「既存杭」「既存地下躯体」「山留め壁等」のいずれかである。
  3. 地下工作物を本設又は仮設で利用する、地盤の健全性・安定性を維持する又は撤去した場合の周辺環境への悪影響を防止するために存置するものであって、老朽化を主な理由とするものではない。
  4. 関連事業者及び土地所有者は、存置に関する記録を残し、存置した地下工作物を適切に管理するとともに土地売却時には売却先に記録を開示し引き渡す。

「3.2.3 存置する場合の留意事項」

  以下は、抜粋です。全部で14項目ありますので、詳細はガイドラインを確認願います。

  1. 既存地下工作物を存置する場合においても、石綿含有建材やPCB使用機器などの有害物ではないこと。
  2. 存置する場合は、対象物の図面や記録等を作成し、設計図書とともに発注者及び土地所有者が保存すること。
  3. 存置に関する関係者間での打ち合わせ等のやり取りを記録として残すこと。
  4. 事前に自治体へ確認すること。

(出典)既存地下工作物の取扱いに関するガイドライン P52~53

自治体の動き

 2022年1月28日には、自治体である西宮市から既存地下工作物の取り扱いに関する通知が出ており、以下のとおり、2022年2月1日から適用が始まるようです。

建設工事などにおける既存地下工作物の取扱いについて

(出典:西宮市ホームページ)

 検索した限り、他の自治体では、このような通知を出しているところはありませんでした。

 いずれにせよ、日建連のガイドラインにあるように、自治体に確認してから対応するということは変わりありませんので、地下工作物を埋め殺しする際には、自治体に確認してから作業をお願いします。

 以上、閲覧いただきありがとうございました。

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